Shiho Niimi @sviesosdaina
戦争ってのは、殺される側だけじゃなく、殺した側や生き残った人たちにも本当に大きな心の傷を作るんだってことが、実感できたの。私が体験したのは戦争ではないから、違うと言えば違うのだろうけど、少なくとも彼のことは自分のことのように思えた。
そして、何もしていないのに、ただ肌の色が違うというだけで、「君だけだよ、ここで僕のことをニグロって呼んでいいのは」って言わせてしまうこの世界ってなんだろう?と思った。
日本人というだけで、「床で寝て」と言われた私は、ホストマザーから見たらどんな存在だったんだろう?
そう改めて考えさせられる出来事だった。
だから、とてつもなく自分ごとになったんだよね、9.11からBLM、大統領選、全てが。
憎しみは憎しみの連鎖を生むばかりだし、差別もまた、怒りや悲しみを生むばかりだって。
そして怒りは分断を招く。
反対に、愛情は希望を生み、優しさを送り合えるようになる。
本当はもっと細かく色々あるんだけど、私の力では上手く伝えられないから、また3.11の映像の編集の話に戻すね。
作業していたある日、ある駅で電車に乗って、出発するのを待っていたの。
そしたら、船みたいにグラグラ揺れて、地震だ!ってなって。
そしたら当たり前だけど全然出発しなくて。
動かないから家に帰ろうと思って電車を降りて駅の改札を出たら津波の映像が流れてた。
それで、すぐ海の近くに住んでるおばあちゃんに連絡したけど繋がらなくって。
家に帰ったら、棚から全部ものが落ちてて、編集の続きどころじゃない。
それから、数日の間に被害の状況がどんどんわかってきて、どれだけたくさんの人が亡くなったか、数じゃなくその一人一人の家族のことを考えると心が潰れそうだったよね。
それで、Twitterを見たの。状況を見ようと思って。
放射能が飛んできてるとか不安な情報や間違った情報、怒っている人たち、悲しみに暮れている人たちがたくさんいて、それをTwitter上で見ていたの。
それで気づいた。9.11からイラク戦争への流れの時と一緒だって。
だから、数日は本当に途方に暮れてたし、情報を知るためにTwitterを見ていたけど、一旦それもやめて、9.11から学んだことをやることにした。
憎しみは憎しみしか生まない。不安は不安を大きくする。
不安だから、怖いから、悲しいから、攻撃に出てしまったりする。
だから、わたしはその渦に入らない。
でも、愛情や光は、希望を生み、不安な心を涙で溶かして、優しく撫でてくれるでしょ。
それが私にとっては映像を編集することと共鳴した。
この映像を編集すれば、誰かに光が届くかもしれない。それが連鎖していく可能性だってある。
見知らぬ誰かがパソコンを開いて、映像を流してくれるかもしれない。
ただ光を届けることがしたいと思った。
映像は、光を届ける窓にしようと思ったの。
家族が東北に住んでいる人たちは、助けるために物資を持って行ったり、実際に何かできることをやっている人たちもいた。けれど、私は何も持っていなかった。
何も持ってない私にできることが、映像を通して光を届けることだけだったの。
それから寄付もした。
9.11が起こった時にね、こういうこと(憎しみや悲しみの渦が生まれること)はきっと10年すればまた起こる、その時のために1000円貯金を始めたの。毎月11日に1000円を貯金箱に入れて。
そしたら本当に10年後、東日本大震災が起こった。だからすぐに、3.11の時、あ、今日11日だって気づいたのね。それで、9.11のこと思い出したの。
日本に帰ってきてから始めたんだけど、それをそのまま寄付した。
この話を友達夫婦にしたら、その後彼らも始めたって言ってたな。
わたしは最近ずっとできてない。
話を戻すね。
それで、大統領選もね、同じなの。
現実で起こってる事件とか事柄は違うけど、根本的なところは一緒。
憎しみは分断を生む。
ジョージアはね、特に私がいた田舎の町はとっても保守派の人が多いところ。
それがいけないわけじゃないよ。みんな優しくて信心深くて、おおらか。愛もいっぱい。
私の仲良しの友達の両親や周りの人たちはね、トランプに投票した人たちがいっぱいいてね。そして、その人たちは今回も共和党に投票したよ。
私の友人は、あなたが誰に投票しようと愛してる、と投票日に投稿していたの。
彼女の周りのほとんどが共和党に投票していたけど、彼女は違っていた。でもだからといって、トランプを支持する家族や友人を決して悪くは言わなかった。
きっと心が折れているであろうその時に、
彼女は自分の意と反する人たちにも愛を送り続けていた。
とても嬉しかった。
わたしもそうありたいと思った。
そして、まさかのジョージアの民主党勝利。
ステイシー(エイブラムス:政治家、弁護士、活動家)さんはじめ、彼らとその支持者の本当に地道な草の根活動が身を結んだね。
私も彼女のように、地道に草の根活動したいと思う。
あの映像もその一環なの。
私がいた小さな町が、選挙の結果を見たら*青(民主党)になってたの。それって本当にすごいことなんだよ!
*「青」の民主党に対して「赤」は共和党を意味する。
若い層に民主党支持者が多かったことをみると、多くの人の考えが変わったというより、若い層が育ったのかなって。
でもね、人の考えが変わらないってことを悲観的に思ってるわけじゃなくて、私たちにはこれからも良い世界に変えていける力があると思っている。
私たち、いま子どもを育ててる世代って、子どもと一緒に世界を変えられる力があるってことなんだ。
どんな世界がいいのか、それを子どもたちと一緒に学んだり伝えたりすることで、今回ジョージアに20年かけて起こったこと(本当はもっととてつもなく長い時間がかかっているのだと思うけれど、私個人は自分が行った時からのことしか実感としてはわからないから20年とするね)を、再び起こすことができるっていう希望がある。
それは何か特別な運動をしなくても日々、淡々と生きる中でもできること。
子育てだけじゃないね。自分の意見を友達と話すだけでもいいよね。友達は政治の勉強会に参加し始めたって言ってた。そんな風に、それぞれがそれぞれの持ち場でできることをやっていけたらいいなって思ってる。
時間はかかるかもしれないけれど、どんなことでも愛を持ってやれば、時間はかかっても少しずつ変化を生むことはできる。それを実感した。
その緩やかだけれど少しずつの変化ってね、とっても地道な草の根活動からしかできないと思ってる。
早く変えてやろう、お前が間違っているんだ!ってなると、力でねじ伏せようとしてどこかで歪みがでたり、ひいては戦争になったりするけれど、
ただひたすら、ゆっくりと光を送り続けるってこと。
私はそれがしたい。
実生活でもそれがしたい!そうしたら我が家のアホみたいな喧嘩は減るはずなのに~笑。
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あとね、アメリカの友達はみんな聞いてくるの。
ところでなんで君はジョージアに行ったの?
共和党圧勝の土地だよねって。
そう聞かれるたびに、毎回、同じように答えている。
「大人になったらどんな都市でも選んでいけるから、行く場所を選ばないことを選んだの。そしたらジョージアになった」って。
そりゃみんな気になるよね。しかも私がいたのはジョージアの中でも大都市のアトランタではなく、Maconという市の近くのさらに小さな街だもん。
でもね、「行く場所を選ばないことを選んだの」というと、みんな納得してくれるの。そして、いい選択だったねと言う。
私もそれでよかったと思ってる。どの町に行きたいか、希望を出せるのに、出さなかった高校生の時の自分をちょっと褒めてあげたいと思う。
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こんなにも、自分にどんなことが起こっていたかを思い出す日々はもうないのかもしれない。いや、10年くらい経ったらまたきっと何か起こってるから、その時、これまで点と点を線で結んできたように、また新たな点が増えるんだろうな。
まさか、最初に(3.11の映像のことで)話し出してから、こんなにも遠くまで記憶を遡ったり、今の自分が出来上がってきたピースを見ることになるとは思わなかったなぁ。
まだ色々ポロポロ思い出しそうだけどキリがないからこの辺で。
こんな過去を一緒に旅してくれて、思い出す機会をくれてありがとう!
もうすぐ3月11日だね。
祈る。
シホ