[読み物②]クリスチャンではなくなっていた友達。イラク戦争から帰還した彼。

Shiho Niimi @sviesosdaina

Shiho Niimi @sviesosdaina

日本に帰った後、何度かアメリカに帰ってくるたびにね、毎回インタビューというほどでもないけど、気になったことをジョージアの友人にたずねていたの。

 

まず最初は、友人達が大学生になった時に変化が起こり始めた。

そして彼らはクリスチャンではなくなっていった。

 

彼らと共に過ごしたクリスチャンの学校では、歴史の教科書が神様が世界を作るってところから始まる教科書を使ってた。

そして、授業中だったかな?

あなたは何を信じているの?って聞かれたから、「進化論」と答えたらみんなびっくりしていた。

 

教会では、涙を流しながら手をあげて歌ってる人がいたりして、最初は驚いたけど、それが普通のことらしかった。

 

留学中に友人たちに、クリスチャンになることを自分で選んだの?って聞いたら、みんな「そうだよ!」と答えてね。

でも私はとても不思議に思っていたの。

 

なぜかというと、クリスチャンの学校へ行き、日曜は教会へ行き、週に一度、友達とバイブルスタディで集まる生活をしていて、クリスチャン以外の選択肢を選ぶことができるのかな?って。

そして、そういう、もしかしたら失礼かもしれない疑問を聞いても、とても親切に答えてくれるいい友人たちだったし、その時に思っていることをそのまま教えてくれて、いまでもありがたいと思っている。

 

その友人たちは、大学入学とともに寮に入ってね。

それで、その時期に会いに行った時に、

しほが言ってた意味がわかった。革命が起きた!と言っていた。

彼らは、クリスチャンではなくなっていたの。

他の世界を、初めて知ったってことだね。

彼らは、実は選択肢がなかった、ということに初めて気づいたんだ。

 

でもね、クリスチャンであることは、あのジョージアの田舎町では、すごく重要なのも少し経ってから理解できた。

クリスチャンコミュニティの中にいることは命を守ることと同じなんじゃないかって。

特に、アメリカは今は保険制度が変わってが少しはマシになっているかもしれないけれど、(日本みたいに)国民皆保険がないでしょ?

何かあった時に、コミュニティにいることで助け合える。友人のお父さんが癌になった時にね、ドネーションを募っていたの。それで、そうか、こういうふうに、教会に集った人たちが大きな家族として助け合っているんだなって知った。そういうコミュニティがきっとたくさんあるんだろうけど、その一つが私がいたようなクリスチャンのコミュニティなんだなって思う。

だから、共に助け合って生きていけるというとても良い面もあるし、反対に、閉じこもった世界にいるから、そのコミュニティの中にいると、外に出るまで(私の友人たちの場合は大学入学で外の世界に出るまで)、他にどんな選択肢があるのか、自分でクリスチャンになることを選んでいるつもりが、実際にはそれしか選べない環境にいるってことに気づけないってことがあると思う。

いろんな宗教があるけれど、何かを信じるということはそれぞれの人の救いになっているんだろうと、一緒に暮らして生活してみてよくわかった。

  

それから、イラク戦争が始まった翌年の夏にジョージアに行った時、とっても心優しい友人に、イラク戦争についてどう思うか聞いたんだ。

そしたら彼は、しょうがないって言ってた。

僕らのアメリカを、家族を守るためだって。

わたしは言い返したの。

「あなたに家族がいるのと同じように、相手にも家族がいるんだよ」って。しかも幼かったから冷静でいられず、つい怒っちゃった。そして、気持ちは通じなかった。

 

それから、この滞在でもう1人、イラク戦争を身近に感じることがあって。

友達の彼氏がイラク戦争から帰ってきてから、マリファナが手放せなくなったの。

それに気づいたのが、お風呂を真っ暗にして、私が撮影したフィルムを巻いてた時にその匂いで頭がグラグラして。それくらい常に、たくさん吸っていた。吸わずにはいられなくなっていた。

後で友人にその話をしたら、その戦争以降のことだと教えてくれた。

 

ここで、とてつもなく、全てが自分ごとになった。

 

私には日本人であることに対する大きな差別と命の危機、その経験からのPTSDとトラウマがあったからイラクから帰ってきた友人の彼氏(マリファナが手放せなくなった人)の苦しみを、自分ごとのように感じたの。そして、同級生の唯一の黒人の男の子、ダニエルの言葉も蘇ってきた。

「君だけが僕をニグロと呼んでいい」というあの言葉。

 

—- 

日本に帰ってからの学生生活の中で気づいたんだけど、何人かにバッっと視線を向けられると、汗が止まらなくなってガタガタ震えちゃうの。

特に、暗いところで人にじっと見られるのに、体が反応するみたいで、友人の家の庭でやるイベントで夜のガレージで歌うことになった時、声も出なくて体が震えて泣いちゃうこともあった。

 

銃を向けられた時のフラッシュバックだってわかったの。

マリファナが手放せなくなった彼も、ふとした時にフラッシュバックしちゃうんだなって思った。

 

Previous
Previous

[読み物③]”選ばないことを選んだ”からこそ体験できたこと

Next
Next

[読み物①] ”9.11も3.11も 全部、つながっている”。ジョージア州の日々を綴ったある手紙